昨年より、プログラム参加者が増えてるんだよね。はっはっ~!

11月22日(火) 10:00~13:00 ヴァルデキアーナ視察研修

①精神保健センター
②ヴァルデキアーナ観光

イタリア研修のことは、ここ数回書いてきたが、書いている自分がもうおなか一杯な感じです。もう飽きた…。

でも、とりあえず記録として書いていきます。


精神保健センター見学

ここヴァルデキアーナでも地域精神保健でのサービスについては、ほとんど機能が同じだと思う。なので、その辺の説明は省きます。

まず最初に精神科の先生が語ったのは、留置場のような病院を廃止したと話があった。

これは国の法律が変わり、司法精神病院もなくすことになったということ。

そのため、トスカーナに47人もの法的に問題のある人が入ってきてサポートすることになったから大変だよと話していた。

現場での対応は大変と思うが、精神病に対するあらゆる隔離をやめたというのは凄いことだと思う。

そして、この研修で特に印象に残ったのが職業訓練サービス。

コーディネーターが企業開拓して、企業と連携して1年間の職業訓練サービスを提供する。もしできると判断されれば、その企業へ就職することになる。
プログラム中は、企業負担0で、行政負担で参加者に給料を渡している。

で驚いたのは、その結果について。

プログラム参加者は22名で、1名が正規雇用。
それ以外は実家に帰った人もいるし、次の年のプログラム待ちとのこと。

「昨年より、プログラム参加者が増えてるんだよね。はっはっ~!」

って自慢げに話していた気がする。

でも実際に仕事できる人は少ないみたいでした。

おいおい、結果率が低すぎるでしょ!

就職が難しいのは分かるけど、うちでも就労訓練参加者の6名中1名は毎年就職してるよ。

ん~、なんだかな~という感じでした。
(この辺のゆるさがイタリアっぽくもあるけどね。)

イタリアは、精神保健サービスが行政サービスとして行われている。
予算によって、削減されるだろうから、日本より福祉サービスは全然少ないと思う。グループホームも少なかった。
サービスに来ている人の支援は出来ているが、つながっていない人もたくさんいるんだと思う。

福祉サービスの量は圧倒的に日本のがいい。
質は細かくまでわからないけど。
ここでの研修で日本の良い面も見えた気がします。


ヴァルデキアーナ観光

この日の研修は早めに終わったので、お食事とちょっと観光。
いや~きれいな街並みです。

本日の昼食はここです。

前精神保健局長のD’Arcoさんと記念撮影。

ここからの風景がいちばんきれいでした。

そして名前を忘れてしまったが、有名な人のお家。

今日はこの辺で終了。


その他イタリア視察記事

これはクライシスだよね。

クライシスへの対応を含め精神病院へ押し付けるのではなく、福祉の力で地域生活を維持できるようにして行かないといけ…

トリエステだけじゃなく、アレッツォもすごいぞっ。

11月21日(月)9:00~18:00 アレッツォ視察研修

①精神保健センター
②総合病院(精神科救急)
③レジデンス


精神保健センター見学

精神保健センターは、145,000人を対象とした行政区域を担当し、精神科医・精神科看護師を中心に心理士、福祉士などのチーム構成で、住民の精神衛生を保つことを目的に活動していた。

24時間365日対応で、医療面においても医学モデルではなく生活モデルが中心。
訪問診療、訪問支援が中心で、心理教育、自助グループ、緊急対応、デイケア、レクリエーション、レジデンスなどのサービスを行っている。この辺はどの州も同じような対応をしている印象だった。

これらのサービスは行政の予算で運営する公共サービスのため、予算の削減などできることが出来なくなることもある。
特に、昨年まではアレッツォ県のみを対応していたが、今年からブロッセントも対応することになって対応が追い付かないと話していた。
予算に依存しているので、財政状況に大きく影響を受けてしまう点は怖いかなと思う。来年からは大幅削減もありうるからね。

「アレッツォには、バザーリアの前から生活モデルを実践している精神科医がいたんだよっ!」と話していた。
やっぱり、イタリア全土にそういう医者が出てきていた時代なんだろうと思う。
でも何となく感じたんだけど、かなりトリエステを意識してる。

バザーリア法の失敗についての話。

退院後のケアの問題。
退院後のケアが全然足らなかったということ。
逆に成功点としては、各地に訪問サービスが広がったこと。
訪問診療を行うことで看護師が一番勉強になったのではないか?と話していた。

訪問サービスがなぜ必要なのか?
服薬している患者さん以外も対応することができること。
薬だけではなく、ソーシャルワーカーも同行するので様々な対応ができる。
ただ基本的な家事などをすることはほとんどなく、励ましたり、本人が出来るように支援する事が中心。
全てが公的なサービスなので、何でもやってあげるという考えではないとのこと。
本人主体でできることはやってもらうという姿勢はいいと思うが、一人ひとりの細かなニーズに対応できるわけではないんだろうと感じた。

【センターで話していた4つのルールについて】
・医者は話すのではなく患者の話を聞け!患者にも情報共有すること。
・困難なことは相手に伝えない。
・できることに目を向けて、一人一人の対策を見つける。
・患者さんに最大限の関心を持つこと。

先生が語っていた4つのルールは、福祉の仕事でも役立つことだと思う。

全体的な印象として、トリエステより医療面の対応が強かったように思う。
色が違うよね。
治療面でも入院等の緊急対応も比較的やっている印象だし、服薬などの医療面の重要性を多く語っていた。


一般病院内精神科救急見学

精神科救急では、病床数は9床で入院対応も15日が限度。
これはどこでも共通しているが、入院は短く地域にて対応するということ。
またグループ心理教育に力を入れている。
ここでは看護師の育成に力を入れており心理教育等の訓練もする。
育った看護師が地域での生活支援の担い手へとなって巣立っていくとのことであった。

病院の先生の話。

「トリエステの保健センターのベットのことだが、精神患者を本当に一般の人と同じように扱うなら、ベットを置かないほうが良いと思っている。これはトリエステへの批判ではないけどね 。」

精神保健センターの時から、ちょいちょいトリエステの話や比較が出てきていたが、アレッツォではトリエステをかなり意識している印象だった。

「トリエステだけじゃなく、アレッツォもすごいぞっ。」って。


レジデンス見学

レジデンスは、デイサービスや訪問サービスを利用しても効果が少ない急性期の方が対象で、日常的な生活訓練を行い、アパートへの生活移行を目的にしているところ。
日本でいう入所型の生活訓練施設と同じだと思う。

またここでは、軽~中度の法に触れた18歳未満の精神病者の生活訓練も行っている。
グループワークを多く取り入れ、SSTやアッセンブレア等を行っている。

利用者さんがより自立した生活をするための機関として重要な役割を担っていると感じた。

長くなったので、ここで終了。

次回は4日目最終日です。
では。

今回はこの写真で。

実は、ライフイズビューティフルの映画の撮影地です。


その他イタリア視察記事

上映会を終えて。

初めてのイベントだけど、みんなの協力もあって何とか形になったなという話。

ぺっぺさんの話。

管理すること、権利を守ること、どちらも真剣に問い続けていく問いなんだよなという話。

精神病はエピソードである。

11月18日(金) 9:30~18:00 ヴェローナ視察研修にて。

①ヴェローナ大学にて ー グルーチ先生の講義
②精神保健センターの見学
③自助活動組織(グループホーム)の見学


ヴェローナ大学講義

バザーリア法の歴史と法の中身、出来てからの現在の状況についてを詳しく説明して頂きました。

(以下、ざっくりとした流れ)
・バザーリア法ができる前の法律から、入院日数が少しづつ減ってきていた。
・1960年バザーリアと賛同する精神科医が集まり改革を始めた。
・1978年180号(バザーリア法)の成立。
・新たに病院を作らない。患者さんを入れない。精神病院を廃止する制度。
・精神病院から総合病院内の精神科救急への移管。入退院の日数が激減。
・総合病院内の精神科救急での治療が減った。
・コミュニティーケア・デイケア・アンブラトーリオなどのサービス増加。

その根底にあったのは、精神病院は治すところではなく、悪くするところ。
(被害者となるキャリアが始まるところとまで言っていた。)

精神病院は治らない。だからこそ環境の改善が必要だ。

自由こそが治療であり、普通の生活をしていくことが治療になる。

では、精神病院をなくすためには何が必要なのか?
①総合病院内での精神科救急サービス。
②精神保健センターのようなコミュニティーサービス。
(様々な機能があります。)
③レジデンシャルサービス。(生活訓練などの訓練)
④グループホーム。

グルーチ先生の言葉で印象に残っていること。

精神病はエピソードである。

症状が悪いときは治療が必要であるが、そうでない場合は必要がないもの。

エピソードという表現は面白いなと思った。
でもなんかそうだよねって、腑に落ちたんだよね。

今回の講義は、自分が知らないことも多かったのでとてもためになりました。
しかし、先生というのは話が長いね。とても勉強になったけどさ。

いつ終わるのか?
ゴールが見えませんでした。


精神保健センター見学

この建物はもともとは精神病院で使われていたところを改装して精神保健センターにしたところだった。
そのためどこか少し冷たい感じ(トリエステより)がしたが、患者さんの様子とか表情を見ると、良いケアがされているんだなと感じた。

ここでは精神科医の研修医が6人くらい学んでいて、精神科医を育てる研修システムがしっかりしている印象を受けた。ヴェローナ大学の精神科医の卵がここで研修して、それぞれの現場へと巣立っていくみたいですね。

それとスポーツや芸術などの作業療法、訪問サポート等、手厚くサポートしているように感じた。

センターの中の機能や役割については、トリエステとあまり変わらないが、運営方法については若干色が異なるように感じた。


自助活動組織見学

市民の住む一般のアパートの一部を借りて、事務所とグループホームを利用しているところを見学した。

一般の住居を間借りしているので市民が隣に住んでいる。
この点は、日本ではなかなか難しいところもあるのかなと思った。

ただ、中身の運営自体は日本のグルーホームとあまり変わらないかな。
設備基準としては日本のが全然厳しいと思う。
まあ制度が違うし民間も運営するから仕方ないけどね。
ホームに住んでいる利用者さんはみんな穏やかに楽しそうに生活していました。

トリエステとヴェローナ、関わりにおいて核になる部分は共有しているが、中身の運営についてはその土地の特色があるように感じた。

とりあえず長くなってしまったので、また次に。


ゴールが見えない講義… ゴールの見えない会食にて

この会食が終わったのは、日が変わってからでした…( ノД`)

今回も最後はきれいな写真で。ヴェローナの闘技場の夜景です。


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「精神医学はエセ科学だ」

11月16日(水) 9:00~19:00 トリエステ視察研修にて。

①ガンビニ精神保健センター
②一般病院の中の精神科救急外来
③就労系のリハビリ労働組合
④ジェンダープロジェクト


ガンビニ精神保健センター視察

「精神医学はエセ科学だ!」

そもそも精神科学はあるのか?
ないものを作って人を区別しているだけではないのか?

精神病院はどこでもそうだが隔離されている。

そもそも隔離というのは本人のためではなく管理する側のために行っている。
苦しんでいる状態で精神病院に来ても良くなる人はいないよ。より悪くなる。

精神病で苦しみさらに自由も奪われる。
それは良くないことなんだ。

だから自由を取り戻そうとした。

患者さんを病気で判断するのではなく、その人の持つ特性や環境で考えること。
でも精神医学は分析的なもので、社会的な側面が全くないんだ。
患者さんが良くなるには、社会的な側面のサポートが必要なのにね。

人としてどう生きているか?

常に向き合わなければ患者に向き合っているとは言えない。

病気や症状だけで本人を見るのではなく、生活の主体者として本人を見なければいけない。

※これは私見ではなく、トリエステで言われていたことです。

イタリアでは、各州内にある地域の地域医療事業体(ASL)において精神保健サービスが配置されている。精神医療や予防、様々なケアサービス、リハビリテーションなども行っている。

地域にはガンビニ精神保健センターのような地域精神保健センターが配置されていて、総合病院内の精神科救急病棟、デイケア、リハビリテーション施設、グループホーム、労働組合などと連携している。

視察したガンビニ精神保健センターの機能としては、日本でいうクリニック、訪問診療、薬局、デイケア、地域活動支援センター、リハビリテーション、ホームヘルプサービス、ショートステイ、その他ソーシャルワークサービスといったところだと思う。
あらゆる機能を持っている。

センターは月曜から金曜と日中に開いていて受診もできる。
訪問活動を積極的に行っていて、各患者の重症度などニーズに応じて治療・介入方針が決められている。
誰でも入れて、誰でも出ていける開けたコミュニティーのような感じだった。

他の機関として、総合病院の救急医療、労働組合のような就労の場、グループホーム、様々な市民団体と協力して患者さんの支援を行っていた。

チーム構成は多職種で、精神科医、看護師、心理士、福祉士、作業療法士、リハビリテーション技術者、教育職、事務職から構成されていると思う。
ただメインは、精神科医、看護師で6割くらいを収めている。

精神科医療者も白衣を脱いで当事者と向き合い、医療モデルではなく、生活モデルで対応しているとのこと。
そして、精神科医も貧困問題、家探し、職探し等も一緒に行っているというから驚いた。患者さんをちゃんと生活の主体者として見ているんだなと感じた。

この部分は日本ではありえないでしょ!って思う。

まあ、そういう先生もいるかもしれないけど少ないんじゃないのかな。

では総合病院内の精神科救急はどうだろうか?
家族からもそうだが、クライシスや警察対応が多い。
これは日本と変わりないだろう。

で入院については?
症状や服薬等の検査に数日間かかり、その後退院して精神保健センターへと移すということ。
圧倒的に日本より早い。
結果がどうこうは分からないけど、地域でサポートするという姿勢が伝わってくる。
凄いね。

この研修で強く感じたのは、医療者が患者にそして地域に降りているということ。
医療モデルではなく、生活モデルを中心に医療から福祉が行われているということ。
精神病院をなくしたが、精神保健の中心は精神科医療が中心であるということ。

自分が考えていた環境の改善こそが必要だということ。

様々なことを学ばせて頂きました。

精神病院をなくしたイタリア。
でもサポートの中心には精神科の医療チームが存在する。
日本でも患者さんの支援には、あらゆるところで精神科医療が責任を担保している。
させられていると言う方ががいいのかな。
絶対的に必要な精神科の医療チームを中心に構成されて、連携している福祉サービスは素晴らしいなと思った。医療が生活モデルでやっているというのは前提だけどね。

いろいろな認識も変わった研修だった。

今回トリエステに来た目的である、保健福祉センターを中心とした他のサポートと連携した総合的なサービスの構築。
バザーリアが作りはじめてから、現在も行われ進化してきたサービスは、日本における法律とサービスを組み合わせれば作ることは可能だと思う。
ほとんどのことが同じようにできる。
制度的にはね。実現も可能だと思う。

でも難しい問題もある。
それは医療側の医療モデルか生活モデルの違い。
これは、うちではどうしようもないからね。

いろいろ困難はあるけど、新たな形で自分なりに表現していきたいと思った。

長くなってしまいましたが、ここで終わりにします。
書ききれないことはまた次に。


最後に、トリエステ統一教会のきれいな写真で。


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これはクライシスだよね。

トリエステには精神病院がない。

病院がなくても、患者を地域生活の中で支えている。

「クライシスの時はどうするんですか?」

日本人の気になるところ。
特に医療関係の人は気になるであろうこの手の問いはよく出る。 

トリエステではクライシスをチャンスと見る。

その人のことをよりよく知る機会となり、その経験が彼らの地域生活での支援に活かされて行くと。

「でも、自傷他害の場合はどうするんですか?」

自傷他害の場合でも、検査や診察をして精神保健センターへ行くことが多い。
どうしてもそれが難しいと判断したら入院で対応することもある。
ただしケースは少ないし入院しても数日で出て行くことが多い。

ここで質問者は、ホッと胸を撫で下ろす。

どこまでも聞いて引き出したい「入院。」という言葉。

この手の質問は「クライシスでの対応について。」自分の考えや行動を正当化したい気持ちが含まれているように感じる。

薬でおとなしくさせる。
それでもダメなら入院だなって。まるでそれが当たり前のようにね。

でもトリエステでは、ほとんど入院中心の対応を行なっていないように思う。

それは肌で感じた。
そうならないような仕組み、向き合い方と対応をしっかり確立しているようだった。

しかしそれは制度の違いや支援者とチームの力量にも寄ってしまうけどね。

そもそもクライシスの捉え方が日本とは全然違うし、これはクライシスだよね度(度合い)も大きく幅がある。

トリエステではクライシスをチャンスと捉えるが、日本はクライシスを限界と捉える。

もうこうなったら無理みたいな。

限界は、支援、サポートの意味で、やりようないから薬飲ませて黙らせて、入院させるしかないと。

またクライシスの幅も全然違う。

トリエステでは、大声あげて騒いでても「彼だしね、しょうがないと。」
しかし日本だったら、クライシスだね、入院だよってなるケースもある。

これは、バザーリアと弟子との相談の時の話のこと。

「彼は大声を出さないと生きていけないけど、僕は大声を出さなくても生きていける。それだけだよ。」と伝えていたことにも大きく関わっていると思う。
違いを認めることが根付いている。

そうクライシスへの懐の深さが大きく違うんだよね。

だから対話の時は、日本とイタリアで言ってることと感じてることが食い違っているように感じるんだと思う。

クライシスへの向き合い方と対応方法。

これが、これからの日本の精神保健にとって重要な課題なんだと思う。

これまではクライシスへの対応を含め、大変なことは何でも精神病院に投げてきた。

それが今、精神保健福祉領域の歪みとなって表出してきている。

もう少しクライシスへの対応を含め精神病院へ押し付けるのではなく、福祉の力で地域生活を維持できるように、自分たちが力をつけていかなくてはいけないんだと思う。


その他イタリア視察記事